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残業代の請求法を綴った無料PDF冊子です>>残業代請求のはなし ←ココをクリック 1.お給料や罰金の額を計算する まず、必ず最初にやらなければならないことは、未払いのお給料がいくらになるのか計算することです。または、引かれ過ぎた罰金がいくらになる のか計算することです。お給料については、時給や日給制の場合であれば、出勤した日数や出勤日数に勤務した時間を掛ければ、未払いのお給 料の額は計算できるので、比較的難しくはありません。ただし、指名に応じた歩合部分やお給料の計算方法が担当したお客様の売上金額の5 0%などといった場合には、正確に計算することが難しいかもしれません。そういった場合にはおおよその額しか計算できませんが、それでも構い ません。 罰金についても同様に計算します。ただし罰金については、前のページで述べているように、そもそも罰金に関する規定が文書で設けられていな い場合は、罰金制度自体が無効と判断されます。そういった場合は、引かれた罰金の全額の返還を求めることができます。また、罰金の対象とな った行為が本当に罰金に値するのか疑問に思っているような場合にも、その罰金の全額の返還を求めてみても構いません。罰金が妥当か否か は、最終的には裁判所が法に照らして判断することです。 2.お給料の支払いや罰金の返還を文書で請求する 未払いのお給料の支払いや罰金の返還は、必ず使用者にそのことを請求(催告)しなければなりません。これは、(ないとは思いますが)店長等が お給料の支払いを忘れていることもありえますし、お給料の未払いや罰金の取りすぎが法律上違法になることを知らないこともありえるからです。 また、お給料の支払いや罰金の返還には消滅時効というものがあります。お給料については本来のお給料支払日から2年を経過するとお給料の 支払いを求める権利を失ってしまいます(使用者が2年を経過した後でもお給料を支払うことを認めた場合は、お給料を支払ってもらう権利を失いま せん)。罰金の返還もお給料の未払いと考えれば2年の消滅時効になります(オーナーの不当利得と考えれば消滅時効は10年になります)。です から、本来のお給料の支払い日から2年を経過する日が迫ってきているときは、取り合えず内容証明郵便等でお給料の支払いを請求して、時効 の進行を一時的に止めなければなりません。時効の進行を止めることを「時効の中断」といいます。賃金の支払い等を使用者に催告すると、時効 の進行が6ヶ月間中断します。 お給料の支払い等は、可能な限り文書を作成して郵送するなどの方法で使用者に通知するべきです。口頭で使用者にお給料の支払いを求めても 構いませんが、上手く言い包められたり、逆に脅されたりしてその場でヘンな誓約書にサインさせられるかもしれません。それに口頭だと、後から 当事者同士、言った言わないの争いになることもあります。使用者が、あなたから催告を受けていないなどと言い出すと、最悪の場合、時効が中 断せず、賃金請求権が一部、消滅してしまう事態にもなりかねません。ですから、そういった不測の事態を避けるために、お給料の支払や、取られ 過ぎの罰金の返還を求める内容の文書を作成し、日付を入れ署名(記名)押印して、その原本のコピーを一部手元に残しておくなどして、請求した という証拠を作っておく必要があります。 文書は書留郵便で送る等しておくと、配達状況をインターネットで確認できます。ただし、夜のお店の場合、書留郵便は配達時受取人不在となり、 最終的に使用者に受け取りを拒否されることもありますので、そういったときは特定記録郵便でも構いません。 また、使用者が確実に受け取ってくれるということであれば、配達証明付内容証明郵便を利用しても構いません。ただし内容証明郵便は書き方に 一定の決まりがありますので、専門書等をよく読んで内容証明郵便の作成方法を理解してから文書を作成するか、無理なときは専門家に文書の 作成を代行してもらった方がよいでしょう。当事務所では文書案の起案業務を承っております。文書の作成でお困りのときはご相談下さい。 文書の郵送がどうしても困難なときは、ファックスを利用して送信するという方法もあります。ファックスを利用するときは、コンビニエンスストアのフ ァックスを利用して、送信後に送信結果を印刷しておくなどして、賃金の支払い等を請求する文書を送信したことの証拠を残しておくようにします。 3.お給料の未払いについては労働基準監督署へ相談・申告する お給料の不払いや、過度の罰金は労働基準法違反となります。ですから、労働基準監督署という行政機関に申告することで、労働基準監督署が お店を調査し、賃金不払いや罰金の法違反を確認したときは、賃金を支払うように、あるいは罰金を返還するように使用者に行政上の指導(是正 勧告)を行ってくれることがあります。ただし、行政上の指導は使用者に賃金の支払いを強制するものではありません。指導に従わず法違反の状 態が改善されない場合は、逮捕して検察に送検することもありますよ、という警告のようなものです。ですから使用者の中には指導を受けてもこれ に従わないものもいます。また、労働基準監督署は、労働者からの申告を受けたからといって、必ずお店を調査しなければならない義務を負うもの ではありません。調査するかしないかは労働基準監督署の裁量です。また、現実的な問題として、労働基準監督署は毎日多くの労働者から相談 を受け付けており、申告事案も多数抱えていることもあり、労働基準監督官によっては申告を受理したがらないということもあります。特に、キャバ 嬢やホステスについては、使用者側からすると、労働者ではないとの主張になりやすいので、労働基準監督署も指導しにくいという面があります。 ですから労働基準監督署に申告するときは、過度の期待を寄せずに、取り合えず申告してみる、といった程度の心の余裕が必要です。 4.裁判外の紛争解決制度であるあっせんを申立てる あっせんは、裁判外の紛争解決制度です。イメージとしては、当事者同士での話し合いでは上手く解決を図れないときに、当事者の間にあっせん 委員という調整役が入って、当事者の間を取り持って、和解に導くというものです。賃金不払いの労働事件については、全国の主な社会保険労務 士会が設けている、社労士会労働紛争解決センターのあっせんが、利用価値があります。その他には全国の司法書士会や弁護士会が設けてい るあっせんの利用も考えられます。弁護士会にはあっせんの延長として仲裁という制度もあります。社労士会他のあっせんを利用する場合、料金 が発生します。行政機関のあっせん制度としては労働局のあっせんがあります。ただし、賃金不払い等の労働基準法に係る事件については労働 局であっせんを受理することはありません。 あっせんは裁判外の紛争解決制度です。そのため当事者に、あっせんに参加を強制することはできません。また、あっせんはあくまで当事者の自 主的な和解をサポートするものですので、当事者に和解を強制することはできません。あっせんでの紛争解決の可能性は余り高くないのが現状で す。 5.裁判所に訴訟を起こす(労働審判を申立てる) 民事紛争の解決手段の最終的な方法は裁判所に訴訟を起こすことです。訴訟は当然ですが強制力があります。 訴訟は、請求金額に応じて、簡易裁判所の小額訴訟、簡易裁判所の訴訟、地方裁判所の訴訟と、3つの訴訟があります。 請求金額が60万円以下の場合、簡易裁判所の小額訴訟を利用できます。簡易裁判所は期日1日限りで結審し即日判決が下されます。訴状の 作成に関しても定型の用紙が用意されており、法的な知識に疎い個人でも利用しやすいように裁判所の配慮が加えられています。 請求金額が140万円以下の場合、簡易裁判所の訴訟を利用できます。60万円以下の場合には小額訴訟を利用できると述べましたが、簡易裁 判所の訴訟を利用しても構いません。事件の内容が複雑で、1日の審理では判断できそうにないような場合には、請求額が60万円以下でも、小 額訴訟ではなく簡易裁判所の通常訴訟を利用すべきです。訴訟の進行方法は地方裁判所の通常訴訟とほぼ同じですが、被告が第1回目の口頭 弁論期日に出廷してくれば、通常は、第1回目の口頭弁論期日から和解が試みられます。ほとんどの場合は、第2回の口頭弁論期日までに和解 が試みられ、裁判上の和解により紛争の解決が図られています。被告が準備書面も提出せず、出廷もしないときは被告敗訴の判決が下されま す。また事件の内容によっては、地方裁判所の通常訴訟同様に、口頭弁論が数回開かれ原告被告双方が準備書面を提出しあって、証人尋問や 当事者尋問などを行った後に、事実を認定して、判決が下ることがあります。 簡易裁判所の訴訟は本人訴訟が6割以上の割合を占めています。もっとも、法的知識に疎い個人で簡易裁判所の訴訟を利用するときは、専門家 に相談する方が無難だといえます。簡易裁判所では弁護士のほか認定司法書士が代理人になることができます。専門家に相談しながら訴訟を 自ら起こすときは、当事務所でも相談に応じることができます。 請求額が140万円を超える場合には、地方裁判所に提訴することになります。地方裁判所の訴訟の場合、通常は何度か口頭弁論が開かれて、 原告被告が準備書面で主張出し合い、必要に応じて証拠と出し合った後、和解が試みられます。和解が成立しないときは判決になります。ただ し、事件の内容や当事者の意向によっては、第1回の口頭弁論期日から和解が試みられることもあります。地方裁判所の訴訟は、かなりの専門 性を要しますので、弁護士に代理人になってもらう方が無難です。 また、ある程度譲歩しても紛争を早期に解決を図りたいというときは、裁判所の訴訟ではなく労働審判手続を利用することも考えられます。例え ば、請求金額が140万円を超えていて、地裁の通常訴訟を利用しなければならないようなときは、判決や判決を前提とした和解に至るまでにかな りの時間とそれなりの弁護士費用がかかります(弁護士を付けずに戦う場合は弁護士費用はかかりませんが)。 このようなときは、ある程度の譲歩を求められますが、労働審判手続を利用すると比較的早期に解決に至ります(労働審判の詳しい説明はこちら >>労働審判)。 訴訟で勝訴し、あるいは裁判上の和解(労働審判も裁判上の和解と同じです)が成立した場合は、使用者から労働者に対する金銭の支払いに 関する部分は債務名義となります。この債務名義は、使用者が労働者に任意に賃金を支払わないときに、裁判所に強制執行の申立てができる 権利です。強制執行は、事業主が個人の場合は個人の財産(事業主名義の銀行の預金口座、動産、不動産、売掛金等)を、事業主が法人の場 合は法人の財産(法人名義の銀行の預金口座、動産、不動産、売掛金等)を、差押える方法になります。
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